ごあいさつ

ごあいさつ

2021年度日本造園学会の開催にあたって

 

 

 2021年度の日本造園学会全国大会にご参加いただき、心より感謝申し上げます。

 昨年度に引き続き、今年度の全国大会もオンラインによる大会開催となりました。直前までハイブリッド形式での開催を模索しておりましたが、大会の二週間前の段階でも変異株ウィルスによるコロナの蔓延が止まらないことから、完全オンラインに一本化して開催するという判断を下さざるを得なくなりました。学会員の皆さまには、直前まではっきりとした開催方法の通知ができませんでしたことをお詫び申し上げます。昨年度の挨拶でも書きましたが、日本造園学会は本来、膝をつき合わせ、対面で議論を交わしてこその学会であると信じています。二年連続してその機会を作れなかったことが残念でなりません。

 コロナ禍が始まって以降のこの一年半の間に、世界の生活は大きく変容しました。その中で、世界中の人々は憩いの場、あるいはリフレッシュの空間として、近くにある公園や緑地を訪れるようになりました。実際に、国内の公園利用は最初の非常事態宣言中から増加しています。その傾向はより身近な公園で顕著であり、さまざまなイベントや仕掛けではなく、単純に緑があるゆとりのある空間が、近隣に生活する人々によって強く求められるようになっていることがわかります。この欲求は今後も増加し続けると考えられます。歴史的に見て、都市域の公園に根源的に求められてきたこのような需要が今、改めて認識されるようになっているのです。そこでは、近年公園に求められるようになってきた経営効率ではなく、緑の量、さらには質が求められるようになっています。リラックスできる空間の創出、維持管理のための技術、技能は私たちがすでに長い時間をかけて培ってきたものです。原点に立ち返ってそれらを改めて考えることは重要であり、今の社会が最も求めていることを考察することは必要不可欠です。

 このような理想像を求めるための対話は、何度も繰り返される経験に基づく議論、さらには現場での検証によって行われる必要があります。今回の全国大会は少しでもそのような機会を創出できることを念願しておりましたが、この機会は、必ず対面で実現できるであろう、来年度の全国大会までお預けとなります。一方、これからの一年の間にも、日本中、あるいは世界中で造園学会の皆さんが対峙する空間に対する人々の視線はますます熱くなると考えられます。関係者の皆さんの知見の蓄積をお願いしたいと思います。

 一方、今年は東北大震災10年目にあたります。この10年間を今年検証することが、積極的に震災復興に取り組んできた本学会にとって重要な節目となっています。日本造園学会が連綿と続けてきた震災復興の実態を実際に目にしていただくことは、まもなく創立100周年を迎える学会にとって不可欠だと考えています。本来であれば、過去10年間の検証を仙台で行い、さらにその先を直接議論する場を設けたかったのですが、これについては後日配信される予定となっております録画等によってご確認をいただき、改めていろいろとお考えいただければ、と思います。

 最後に、このような状況の中で、全国大会の準備に尽力いただきました、関東支部、関東支部とともに東北での開催に積極的に協力いただきました東北支部、大会実現に尽力いただいた企画委員会、研究発表会等のオンラインでの実施に向けてさまざまなアイデアを出していただいた学術委員会、総務委員会や編集委員会等々、数多くの皆さまのご努力に心から感謝申し上げます。

 このような書面での挨拶はコロナ禍の前の全国大会にはありませんでした。直接メッセージをお送りできなくなったことから、昨年度からはじめさせていただきましたが、来年度はこのようなことをすることなく、全国大会会場で直接皆さまと交流ができる日が来ることを祈念してこの挨拶を終わりたいと思います。

 会員の皆さま、不自由さは伴いますが、今回も存分に知識を吸収し、情報を交換していただきたいと思います。活発な交流を期待しております。